※この物語はフィクションです。登場人物・団体・状況はすべて架空のものであり、実在の人物・団体・施設等とは一切関係ありません。
登場人物はすべて20歳以上の成人として描かれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
静寂のフロアではじまる小さな欲望

夜のオフィスは、昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。
コピー機の音も、電話のベルも、誰かのキーボードを叩く音もない。
聞こえるのは、自分の足音と、心臓の鼓動だけ。
佳澄はひとり、デスクに残っていた。
月末締めの処理、顧客からの修正依頼、明日の会議資料。
どれも今すぐやらなければいけないわけじゃない。
でも「帰ります」と言えない自分が、残業の理由だった。
今日の佳澄は朝から気持ちがざわついていた。
新しく導入されたプロジェクトチームの初会合で、いつもよりきっちりめの黒スーツを着た。
タイトなジャケットにヒップラインを強調するスカート、透け感のある黒パンスト。
その姿を鏡で見たとき、どこか自分じゃないような感覚になった。
「仕事に集中しなきゃ」
そう思うほど、頭の中は別のものでいっぱいになる。
自分の脚線美に自然と視線を落としてしまった午前中。
会議中にふと、視線を感じたような気がして、誰とも目を合わせられなくなった午後。
その感覚がずっと、離れなかった。
──やばい、ムリかも。
気づけば佳澄はトイレに向かっていた。
誰もいないフロア。明かりの落ちた廊下。
革靴の音だけが、響いている。
個室に駆け込むと、ドアを閉め、鍵をかけ、背中を壁に預けた。
息が荒くなっている。
スカートの中で、パンストの下にある自分の熱が、どんどん主張を強めていく。
「こんなところで、なにやってるの……」
でも、止まらなかった。
ひとり堕ちていく欲望

個室の中で、佳澄はそっと息を吐いた。
心臓の音がうるさい。
呼吸が浅くなるたびに、胸の奥でなにかが震えている気がした。
「……っ、やば……」
右手がゆっくりと太ももをなぞる。
スカートの中、ぴったりと肌に貼りついたパンスト越しの感触に、ゾクッとした。
――ダメだって、こんなところで。
でも、そんな理性はもう何の効力もなかった。
指先が伝うのは、パンストのなめらかさと、自分の熱。
スーツの下に閉じ込めていた欲望が、溶け出すように膨れあがっていく。
「はぁっ……っ」
佳澄は震える指で、スカートをたくし上げた。
その瞬間、空気が脚の付け根まで流れ込み、カラダがびくんと反応した。
ピンヒールのまま、つま先で床を探るように踏ん張る。
パンストの股布越しにあてがった指先が、ゆっくりと円を描きはじめる。
濡れているのが、わかった。
誰の目もないこの場所で、自分を慰めていることに――たまらないほど、興奮している。
「くっ……ん、ぁ……っ」
右手は前、左手は口元へ。
声を殺すために、自分の指を噛んだ。
それでもこぼれる甘い吐息は、止められない。
目を閉じると、今日の自分の姿が頭に浮かんだ。
ぴたっと身体に沿ったジャケット。
スカートの下でくっきりとわかる、ヒップライン。
パンスト越しの自分の脚。
それを、誰かが見ていたかもしれない……という妄想が、一気に佳澄を追い詰めていく。
──見られてたら、どうしよう。
でも、もしも誰かが欲情してくれてたら……。
「んんっ、あっ……やっ……」
パンストの上から激しく擦るたびに、指先がぬるくなる。
もっと深く、奥へ。そう思った瞬間――
「……ビリッ」
破いた。
パンストの繊維が裂ける音に、佳澄の身体がびくついた。
でも、止められなかった。
裂け目から指を差し入れ、直接そこへ触れる。
そこはもう、濡れて熱を帯び、甘い脈打ちに満ちていた。
「はぁ……は、んんっ……も、ダメ……っ」
指先が敏感な部分をとらえた瞬間、膝がカクンと抜ける。
それでも腰を振るようにして、最後の波を求める佳澄。
限界はすぐに来た。
ぴくぴくと震える太もも。
滴るような汗。
わずかに漏れる、か細い声。
やがて、静かに訪れる余韻。
佳澄は、破れたパンストを指でそっと隠しながら、天井を見つめていた。
胸の鼓動がようやく落ち着きはじめる。
「……なにしてんだろ、私……」
でも、後悔はなかった。
ただ、虚無と満足感が同時に押し寄せてくる。
それすらも、なんだか心地よくて――。
──そのとき。
トイレの前の廊下から、ふいに足音が聞こえた。
ピタリと息を止める佳澄。
「……佳澄? おーい、まだ残ってんのか?」その声に、凍りつく。
上司だった。
聞こえた上司の声、想像の中で抱かれて

個室のなか。
佳澄は震える指で、破けたパンストの裂け目をそっとなぞった。
一度果てたはずのカラダは、まだ熱を帯びたまま。
下着は濡れそぼり、ぴったりと肌に貼りついて離れない。
なのに、心の奥にはまだぽっかりと、なにかが空いていた。
「……声、上司の声……だったよね」
さっき、確かに聞いた。
自分の名前を呼ぶ、あの人の声。
静まり返った廊下に、そのひと声だけが鮮明に残っていた。
――やばい、私を探してる?
頭の中がぐるぐると回る。
けれど次の瞬間、思考はふと別の方向へと逸れていく。
もしもあの人が、ドアの前で立ち止まっていたら?
もしもこの個室を開けて、あの人が入ってきたら――?
「……っ、だめ、そんなこと……考えたら……っ」
でも、止まらなかった。
瞼を閉じると、脳裏には自然と彼の姿が浮かんでくる。
いつも低くて安心する声。
シャツの袖をまくった腕、さりげない気遣いの仕草。
――その手が、自分の腰にまわってきたら。
「……あぁっ……っ」
佳澄はもう一度、スカートをたくし上げた。
ピンヒールのつま先が床をキュッと擦る。
小さな個室のなかで壁に手をつき、背後から触れられるようにヒップを突き出す。
「後ろから、されたら……私……っ」
右手が濡れそぼった裂け目へそっと触れる。
「……んんっ……くちゅ……ぬちっ……はぁっ……」
パンストの裂け目から、湿った音が指先に返ってくる。
その音が、自分のなかの“欲しい”を煽ってくる。
「やっ……そんな風に触れられたら……また……っ」
彼の手の感触を想像しながら、指を奥へと押し込む。
「ぬるっ……くちゅっ……」
音をたてて沈み込むたび、カラダがぴくぴくと震えた。
「はっ……ん、んんっ、あ……っ」
口を押さえても漏れる喘ぎ声。
それは、さっきよりずっと生々しく、甘く響く。
立ったままの体勢。背後からの圧。
それだけで、本当に彼に抱かれているような錯覚すら覚える。
――佳澄、おまえ、こんなになって……
――全部、俺に見せてみ?
脳内で響く“彼”の声が、快感に拍車をかける。
「そんなこと……っ、言われたら……また、イッちゃう……っ!」
自分で動かす指のテンポが、どんどん早くなる。
「くちゅ、くちゅ、くちゅっ……」
それにあわせて、声も荒くなっていく。
「……やば、あぁっ……んっ……もう、ムリ……っ!」
壁にもたれて、顔をゆがめる。
ヒールのかかとがカツンと床を叩き、揺れる腰。
自分で抱かれて、自分で堕ちていく。
「来る……あっ、ああっ……や、やだ……っ!」
ビクッ、ビクッ、とカラダが跳ねる。
ぐしょぐしょになった指先が、びくびくと痙攣する膣奥を撫でるたび、脳が白くなる。
すべてを吐き出すような長い吐息。
「……っはぁ……ぁぁ……」
佳澄は壁にもたれ、膝が笑うのをこらえながら、ぐったりとその場にしゃがみ込んだ。
やがて、静かに訪れる余韻。
息が整ってきた頃、スカートを直し、裂けたパンストの穴を隠すようにして立ち上がる。
鏡の中の自分は、少し潤んだ瞳に、紅潮した頬。
「……最低、私……」
でも、その顔にはどこか充足の色があった。
個室を出て、夜の廊下を歩く。
誰もいないはずのその空間の先――誰かが歩いてくる足音。
「……!」
それは、彼だった。
淡くすれ違うふたり。
「……おつかれさま。無理すんなよ」
ぽつりと、ただそれだけ。
佳澄は小さく頷きながら、その背中を見送った。
さっきまでの妄想が、まだ脳裏に焼きついて離れない。
その熱だけを胸に残して、静かな廊下をひとり歩いた――。
※本記事に掲載されている画像はすべてイメージです。モデルは20歳以上であり、演出・フィクションを含んでいます。